生活情報紙「さりお」の記事

「漢方よもやま話」より

杏仁豆腐を生んだ中国の名医の話
 三国時代(220〜280年)に活躍した名医として、華陀(かだ)が有名ですが、同時代に董奉(とうほう)という名医もいたそうです。
 董奉は病人たちの治療を無償で行っていました。治療費を一切受け取らない代わりに、家の周りに杏(あんず)を植えてくれればいいと言います。重い病気なら5株、軽い病気なら1株植えさせていたようです。
 数年で見事な杏の林が出来上がりますが、董奉がそれを独り占めすることはありませんでした。杏の果実を同量の穀物と交換し、余った杏は売って貧しい人や旅人に与えていたようです。
 この話に由来し、良医のことを「杏林(きょうりん)」と呼ぶようになりました。病院や医科大学、製薬会社などの名前にも用いられています。
 杏の種は杏仁(きょうにん)といって、せき止めなどの作用があるとされ、漢方薬に配合されることがあります。
 董奉は、「杏仁をすりつぶしたものが苦くて飲みにくい」という病人に対し、砂糖などを加えて甘くしてはどうかと助言します。それが杏仁(あんにん)豆腐として広がり、現代でも人気のスイーツです。また、杏の果実は「アプリコット」として口にしたことがある人も多いでしょう。
 杏の開花時期は3月から4月。桜の花が咲く前に開花します。桜、梅、桃の花によく似ているため区別が難しいかもしれませんが、早咲きの花を見たら、杏かどうか確かめてみてはいかがでしょうか。