生活情報紙「さりお」の記事

「ここが知りたい漢方」より

漢方では重要な「冷え」や「冷え症」
体質に合った昔ながらの日本の生活の見直しを
 梅雨が明けて暑い日々が続いていますが、最近は冬だけでなく夏でも冷えが気になるという人が増えています。
 西洋医学には「冷え」に対してはっきりとした定義はありません。単なる自覚的な症状として扱われてしまうことが多いようです。
 一方、漢方では「冷え」や「冷え症」という言葉はよく使用され、その人に適した漢方薬を選ぶ上で重要な症状の一つとなっています。
 冷えを感じるといっても、症状は人によって異なります。全身が冷える、手足が冷える、腰が冷える、お腹が冷えるなど、冷えを感じる部位はさまざまなのです。
 古い医学書の中にも、水の中に座っているように冷える、氷を当てているように冷えるなど、いろいろな表現が出てきます。
 冷え症は生まれついた体質による先天的なものと、生活環境などが原因で起こる後天的なものがあります。
 農耕民族である日本人は、昔から生のものをあまり食してきませんでした。日本人の体は熱エネルギーを産生する能力が低く、外界や摂取した食物による影響を受けやすい体質になっています。
 一方、狩猟民族である西洋人は、肉食を主として果物や野菜を日常的に生のまま利用してきました。彼らは熱エネルギーを産生する能力が高く、冷えに対する耐性があるといわれています。
 このように、民族による体の代謝の状態は異なりますが、現在の日本では「食の欧米化」が定着し、生野菜や果物を摂り過ぎる機会が格段に増えています。冷蔵庫や冷凍庫の普及により、夏はもちろん寒い冬にまでアイスクリームやジュースなどの冷たいものを過度に摂取しています。
 また、冷暖房の普及により薄着が一般化してしまっています。
 このような環境が、冷え症を増やす要因になっているのです。
 1957年に行われた東京大学の教授らによる調査では、日本人の平均体温は約36.9℃でした。その後、2008年にある民間企業で行われた調査によると、成人した日本人の平熱は約36.1℃だったそうです。
 寿元堂薬局に相談に来られる人でも、平熱が35℃台で冷えを感じている場合が以前よりも随分と増えています。
 冷えるだけでなく、冷えが影響する病気や症状で悩んでいる人は本当に多くいます。冷え症が病気を招くケースもあるので注意が必要です。
 今一度、私たちの体質に合った昔ながらの日本の生活を見直してみてはいかがでしょうか。