生活情報紙「さりお」の記事

「ここが知りたい漢方」より

感染症にも対応してきた漢方薬
症状や体質の微妙な違いで適する漢方薬は異なる
 新型コロナウイルスにより大変な事態になっていますが、人類には伝染病と戦い続けてきた長い歴史があります。
 1928年に発見された抗生物質であるペニシリンによって、感染症と抗生物質の歴史は始まります。ペニシリンが普及すると、感染症で亡くっていただろう多くの命が救われました。
 その後、次々と新しい抗生物質が開発され、日本でも〝死の病〟と恐れられていた結核でさえ、患者数は年々減少しまし た。衛生状態がよい日本では、感染症を恐れるという意識はあまり強くないでしょう。
 しかし、2000年代に入ってからは、SARSやMARSなどの特効薬がない感染症が発生し ています。
 今回の悪質な新型コロナウイルスにも特効薬がなく、脅威以外の何ものでもありません。
 抗生物質のない時代には、伝染病は大変恐れられていました。
 中国の後漢の時代、長沙という郡の長官であった張仲景(ちょう・ちゅうけい)は、200人余りいた親族の3分の2を10年ほどの間に亡くしています。その内の7割が伝染病などの急性疾患が原因でした。
 そこで張仲景は発奮して、当時の医方、薬方を集成して210年ごろに「傷寒論(しょうかんろん)」を著します。傷寒論の傷寒とは、伝染病を含む急性の熱性疾患のこと。風邪をはじめ、腸チフスなどの感染症も傷寒と考えます。
 この傷寒論は最古の漢方薬物療法書であり、後世に大きな影響を与えました。有名な葛根湯(かっこんとう)も収載処方の一つです。
 さて、西洋医学は細菌やウイルスの種類によって薬を使います。
 一方、漢方は症状や体質によって薬を選ぶのです。感染症の原因が一般的な風邪ウイルスであろうと新型コロナウイルスであろうと、あるいは全く別の病気であろうと、症状や体質などの条件が同じであれば、適する薬も同じなのです。
 抗生物質がない時代には漢方薬で感染症に対応していました。漢方古来の伝統と技がほとんど受け継がれなくなった現在でも、漢方薬の効果が期待できる一面もあるでしょう。
 しかし、症状や体質の微妙な違いにより適する漢方薬は異なるため、その人の状態に合ったものを選ぶ必要があります。
 「○○は新型コロナウイルスに効果がある」などという根拠のない宣伝に惑わされないよう注意が必要です。
 今回の事態が一日も早く終息することを願っています。