生活情報紙「さりお」の記事

「ここが知りたい漢方」より

副作用と誤解されやすい誤治と瞑眩
悩んでいる状態に「適〝剤〟適所」で使えば心配なし
 昔から「西洋医学の薬は副作用が不安なので漢方薬を試したい」という人は多いものです。
 漢方薬も医薬品である以上、副作用の可能性がないとは言えません。
 しかし、漢方薬の副作用と思われているものには、副作用と誤解されやすい「誤治(ごち)」と「瞑眩(めんげん)」が含まれていることが少なくありません。
 漢方医学には「証(しょう)」という、個人の体質や病状を総合的に判断する指標があります。証に合った漢方薬を選ぶことが、効果を得るためには重要となります。
 しかし、中には証の判断を誤ること(誤治)もあります。
 以前の話ですが、西洋医学の現場で証が軽視され、「風邪には葛根湯」といった病名だけで漢方薬が選ばれていたことがありました。
 約20年前、「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方薬が、慢性肝炎での肝機能障害を改善すると証明されました。そして、証に関係なく、むやみに用いられた結果、間質性肺炎という重篤な副作用が出てしまい、「安全」「副作用が全くない」と思われていた漢方薬に副作用があることが大きな問題になったのです。
 とはいえ、当時は慢性肝炎はインターフェロン製剤くらいしか治療法がなく、問題になった間質性肺炎の副作用の発症頻度は10万人に182人。一方で、小柴胡湯の発症頻度は10万人に4人(秋葉哲生著「医療用漢方製剤の歴史」より)。安全性は決して低くありませんでした。
 このように、漢方薬が正しく用いられず起こる不都合な症状を副作用と思われるのは残念です。
 また、証の判断は正しいけれど、症状が一時的に悪化する場合もあります。これを「瞑眩」といい、一過性の病気の増悪のあと、病気が治癒する 方向に向かいます。
 江戸時代の医師・吉益東洞(1702~1773)は、「もし薬、瞑眩せずんば厥の疾(そのやまい)癒えず」との考えを大切にしており、激し い治療を行ったという記録も残っています。
 しかし、これまでの長い歴史の中で、重篤な副作用を起こす漢方薬は使用されなくなり、副作用の出にくい効果的な薬が現在に伝わっています。
 病名だけで安易に漢方薬を選ぶのではなく、その時の体質と症状などをよく観察することが大切です。
 口に入れるものである以上はアレルギーなどの可能性もありますが、悩んでいる状態に適する漢方薬を適切に使えば、副作用の心配は少ないと考 えてよいでしょう。