漢方薬で使用される生薬の多くは植物ですが、動物や鉱物も昔から利用されています。
動物生薬には、地竜、蝉退、白姜蚕、土別甲、阿膠など、多くのものがあり、鉱物には滑石、石膏などがあります。
ここでは特に有名な、牛黄、熊胆、鹿茸を紹介しましょう。
牛黄(ごおう) |
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牛黄は高貴薬に属する動物生薬の中で最もよく使われています。多くの製剤に配合されていますが、牛黄の効果を最も効率よく利用するためには、良質の牛黄をそのまま粉末にして飲みます。 漢方では、感染症などの熱性疾患で高熱、意識障害、けいれんの発作などがあるときや、慢性肝炎、小児の疳(かん)や大人の中風、高血圧症、脳卒中による意識障害、狭心症、不整脈などに効果があり、特に肝臓と心臓の機能増強を目的として頻用されるほか、体力増強や疲労回復を目的としても重宝されます。 品質の良い牛黄は粉末にすると黄色みがかったきれいな黄土色をしています。多少品質が落ちても粉末にしてしまえば違いは分かりませんが、さらに品質が悪くなると色が汚くなります。
「奇応丸」「救命丸」などの子供の薬、「六神丸」「救心」といったような心臓の薬など、日本の古くからの家庭薬にも使われています。 |
熊胆(ゆうたん) |
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熊胆は一般に“熊の胆(くまのい)”といわれているものです。くまのいを“熊の胃”と思っ 熊胆単体で粉末として使用され、昔から高貴薬の一つとして知られており、慢性肝炎や肝硬変など肝臓病の薬としても重宝され、牛黄などとともに利用されることが多いようです。 最近では(平成30年)では、中国の熊牧場で養殖された熊から抽出した熊胆が多く使われていますが、やはり自然の採取品とは品質が異なります。 |
鹿茸(ろくじょう) |
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鹿茸は中国東部やシベリアに生息するマンシュウアカジカという鹿の角です。 鹿茸の効果は即効的なものでありませんが、富山医科薬科大学の難波恒雄教授は「連続服用によってはっきり認められることは酷暑、酷寒の厳しい気象的条件の変化にもよく耐え得る生命力を養ってくれることである。すなわち、漢方医学上でいう元気の活動が盛んとなってくることである」といわれています。 鹿茸はスライスして利用しますが、中国や韓国の人たちは、疲れがたまると鹿茸を配合した煎じ薬を飲みます。これを補薬といいますが、これを飲みやすくしたものを鹿茸大補丸(ろくじょうたいほがん)といい、ストレスの多い現代人の肉体疲労や虚弱体質の改善などに幅広く利用される数少ない漢方処方の一つです。 |