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目次
漢方の歴史
歴史のひとこま
漢方は非科学的?
漢方は古典が大切
漢方の必要性
漢方薬の剤型
漢方薬の品質
生薬の品質
漢方薬の効き方
効き目の不思議
漢方薬の副作用
漢方とのつき合い方
漢方はゆっくり効く?
漢方薬の飲み方
漢方を試してみたい病気
漢方薬の効き方の実際
漢方專門薬局の実際
漢方薬の効き目の不思議
 漢方薬は確かによく効きます。しかし、科学的に薬効が証明されている不思議?わけではありません。 「○○という病気に効く漢方薬は何?」、「漢方薬はどうして効くの?」、「漢方薬は病気の原因のどこを治すの?」などとよくきかれますが、このような質問に対して、漢方の考え方を述べることはできます。
 しかし現実には、西洋医学的な答えを求める人が多いものです。
 漢方薬の効き目を西洋医学の考え方で説明しようとするのは容易ではありません。というか、現在の科学では不可能なのです。ですから、これらの要望に誠実に答えようとすればするほど、「なぜ効くのかわからない」というしかありません。
 この漢方薬に含まれる△△という成分が、人間の体の××の働きを強くして病気を治すなどという理屈では、漢方薬の効き目は表現できないのです。
 また例えば、漢方薬で冷えを改善すると病気もよくなるなどという理由付けをすることがあります。しかし、冷えを改善する漢方薬がたくさんある中で、なぜこの薬を選ぶのかという根拠にはなりません。
 桂枝湯(けいしとう)という漢方薬の加減方を例にして、漢方薬の効き目の複雑さの一端を知っていただき、上手に漢方薬を利用する一助になればと思います。
桂枝湯(けいしとう)の加減方について
 桂枝湯(けいしとう)という漢方薬があります。「傷寒論(しょうかんろん・中国・後漢)」という古典に収載されている重要な漢方処方です。桂枝湯は多くの漢方薬の中でも基本的なもののひとつで、構成生薬は表①のように五種類の生薬です。
表① 桂枝湯(けいしとう)の構成生薬
生薬名 使用部位 薬効
桂枝(けいし) クスノキ科ニッケイの枝皮 駆風 解熱 発汗 鎮痛 矯味
芍薬(しゃくやく) ボタン科シャクヤクの根 鎮痙 鎮痛 鎮静 緩和
甘草(かんぞう) マメ科ウラルカンゾウなどの根 緩和 消炎 解毒
生姜(しょうきょう) ショウガ科ショウガの根茎 健胃 鎮嘔 矯味 去痰
大棗(たいそう) クロウメモドキ科ナツメの果実 緩和 強壮 鎮静 利尿
 そして、桂枝湯を基本にして多くの加減法が作られています。
 桂枝湯から派生した最も簡単な薬に、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)があります。
 表②のように、それぞれを構成するのはどちらも同じ五種類の生薬で、桂枝湯の中の芍薬の量を二グラムだけ増やしたものが桂枝加芍薬湯です。
表② 桂枝湯(けいしとう)と桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)の構成生薬の量
桂枝湯(けいしとう) 桂枝4.0g 芍薬4.0g 甘草2.0g 生姜1.0g 大棗4.0g
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) 桂枝4.0g 芍薬6.0g 甘草2.0g 生姜1.0g 大棗4.0g
不思議??? この二つの漢方薬の作用を西洋医学的に考えると、含まれる生薬が同じであれば、配合量に若干の差があっても、基本的には効果の差はないか、もしあったとしても、きわめて小さいと考えるのが普通でしょう。
 ところが、桂枝湯は風邪などの発熱性疾患に使われる薬であり、桂枝加芍薬湯は便秘や下痢など、腸の変調の改善に使われます。
 これを料理に喩えてみましょう。桂枝湯の効果をカレーライスの味とするならば、その中の玉ネギを少し増やすだけで親子丼のような予想もつかない味に変わることなのです。
 桂枝加芍薬湯の他にも、桂枝湯に少しの生薬を去加するだけで、全く異なる効果をもつ漢方薬に変わるものはいくつもあります。
 表③のように、桂枝湯から芍薬を去ると桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)になり、動悸や呼吸困難を治し、厚朴(こうぼく)と杏仁(きょうにん)を加えると桂枝加厚朴杏子湯(けいしかこうぼくきょうしとう)になり気管支炎や気管支喘息に使われます。
 また、朮(じゅつ)と附子(ぶし)を加えた桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)は、神経痛や関節リウマチに効果的で、竜骨(りゅうこつ)と牡蠣(牡蠣)を加えると桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)になり、いわゆるノイローゼなどに使われます。
表③ 桂枝湯(けいしとう)の加減方の一部
去加する生薬 新たにできる漢方薬の名前と主な効能
芍薬を加える 桂枝加芍薬湯 腸の薬
芍薬を去る 桂枝去芍薬湯 動悸、呼吸困難の薬
厚朴、杏仁を加える 桂枝加厚朴杏子湯 気管支炎、喘息の薬
朮、附子を加える 桂枝加朮附湯 神経痛、リウマチの薬
竜骨、牡蠣を加える 桂枝加竜骨牡蛎湯 ノイローゼの薬
 これらも料理に喩えれば、カレーライスの中の野菜の一つ二つを去加すればキツネうどんや天ぷらソバになってしまうというような大変な変わりようなのです。
 このようなことは、西洋医学の理屈ではとうてい考えられません。配合される生薬や成分だけで、漢方薬の作用を理解することは不可能です。
 遠い将来には、漢方薬の効果を西洋医学の手法で解明されることがあるかもしれません。
 しかし現在の時点では、漢方薬は漢方という方法論で使うことによって、よりよい効果を引き出すことができるのです。
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