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心の病気と漢方
 さまざまなストレスに囲まれている現代社会を反映してか、心の病気で悩む人が増えています。
 一時期、自律神経失調症という病名の人が大幅に増えたことがあります。自律神経失調症には、はっきりとした診断の基準がありません。肩こり、頭痛、めまい、いらいら、だるさなどの不定愁訴があっても、検査で身体に異常が認められない状態を自律神経失調症とよんでいるのです。
 そのため、神経症(不安障害)やうつ状態など心の病気の多くが自律神経失調症という病名にされていたようです。
 精神科や心療内科など、心の病気の専門家の診察が受けやすくなると、診断名も専門的なものに変わってきました。
 たとえば、以前は自律神経失調症という病名でも、自律神経の失調をおこしたのは神経症によるものだったという具合です。
 心の病気は、アレルギーの病気や女性の病気と共に、最近も急速に増加しているように感じます。
気づきにくい心の悩み
 心のトラブルで相談に来られる人の中には、生活に支障があるわけでなく、何の不安もない生活をおくっているという人がときにあります。
 さて、漢方には「癇症(かんしょう)」という病名があります。
 はじめは「引きつけ」のことだったのですが、後に癲癇(てんかん)の意味になり、さらには、細かいことを気にする性分なども意味するようになりました。
 そして癇症の人は、今でいう神経症、不眠、健忘などの心のトラブルをおこしやすいのです。
 虚弱な人の癇症の改善に使われる漢方薬のひとつに桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)があり、神経症、不眠症、夜尿症などにもよく使われます。
 江戸時代の古典には「この処方が適する状態は、虚弱な人の癇症で、富貴、安佚(あんいつ/何もしないで遊び暮らすこと)の人に多くあるものである。」(意訳)という文章があります。
 今も江戸時代と変わりなく、平和な時代が続くときには、豊かで生活にたっぷり余裕のある人にも、自覚しない悩みがあるということなのでしょうか。
西洋医学では
 西洋医学では心の病気の分類は複雑です。最近は病気の原因よりも症状を重んじるようになり、病名も変わってきました。しかし、ここでは、わかりやすい表現を用いてみました。
 西洋医学では、心の病気は大きく三種類に分けられます。
 病気の後遺症や事故などで脳が損傷を受けたためにおこるものは器質性の精神疾患で原因がわかりやすいものです。
 原因のよくわからないものを内因性の精神疾患とよびますが、その人の持つ素質や遺伝がかかわっていることが多いとされており、統合失調症や躁うつ病などがあります。
 ストレスなどの心理的な要因によって、心のバランスが乱れておこるものは心因性の精神疾患とよばれ、神経症や心身症などがあります。
 心の病気で最も多いのが神経症です。人口の一割を越える人に症状があるともいわれています。以前はノイローゼともいわれましたが、最近では不安障害とよばれるようになってきています。
 神経症はストレスなどの心理的要因によって、心身の働きが乱れた状態です。健康な人が普通に体験する心や身体に対する感覚や感情が、過度になった状態ともいえるでしょう。
 わかりやすいものに強迫神経症の症状があります。一度洗えばきれいになるものを、しつこく何度も洗ったり、戸締まりが気になって、やはり何度も確かめずにはいられないという状態になって、日常の生活に支障をきたすようになったものです。
 神経症の中で最も多いのが不安神経症です。何らかの心の不安が自律神経の働きを乱して、動悸、過呼吸、めまいなどの症状をおこします。 そして、これらの症状が発作的に強く出るようになったものがパニック障害です。
 この病気は、強い不安とともに、激しい動悸、頻脈、息苦しさ、発汗などのパニック障害症状が突然にあらわれるパニック発作を繰り返し、死ぬほどの恐怖を覚えるケースもあり、大変苦しいものです。
 その他、人前に出ると顔が赤くなったりする対人恐怖や、高いところを嫌がる高所恐怖などの恐怖症等々、神経症には様々な症状があらわれます。
漢方では
江戸時代の医師 江戸時代を代表する処方集「古今方彙(ここんほうい)」には、諸気、欝証(うつしょう)、癇証(かんしょう)、怔忡(せいちゅう)、驚悸、虚煩、不寐(ふび)などという分類で心の病気の治療法が記載されています。
 これらの分類は、日本の医学に大きな影響を与えた中国の明の時代の書「万病回春(まんびょうかいしゅん)」や「寿世保元(じゅせいほげん)」の分類に準じています。
 漢方の病名分類を西洋医学で正確に表現することはできません。漢方では古くから、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という七つの感情(七情といいます)が体調に大きく影響することが理解されております。
 そして、諸気には感情の乱れによっておこる病気に関する治療法が記載され、欝証は今のうつ症やうつ状態に近いもの、癇症は癇が高い状態、怔忡は胸騒ぎがして落ち着かないこと、驚悸は驚きやすくてびくびくし、動悸をうったりする症状、虚煩は胸が苦しい状態、不寐は不眠のことです。
 漢方は心の病気にもよく奏効します。自律神経失調症と診断された人、神経症やパニック障害で大きな不安を抱いている人、うつ状態や不眠症などのほか、動悸、いらいら、のぼせ、怒りっぽい、頭が重くてすっきりしないなどの症状で悩んでいる人が相談に来られます。
 それらの中には漢方だけで十分に対応できるものも少なくありません。しかし、ある程度症状が進んでいる場合は、やはり心の病気の専門家である精神科や心療内科を主として、漢方を併用するとよいでしょう。
心の病気はあせらずに…
 心の病気には周囲の人の対応が大きく影響します。最近は、心の病気に対する誤解がずいぶん減ってきました。しかし、未だに理解のない人から「やる気がない」、「根性がない」、「なまけもの」などと言われ、追い込まれていくケースも多いようです。
 また、薬さえ飲めば簡単に治るなどという過大な期待をもったり、回復の良い兆候は見過ごして、残っている悪い症状ばかりを気にしてあせってしまうなど、本人はともかく、周囲の人の理解と協力が十分でないケースが少なくありません。
 性格的な素因もありますが、複雑な社会との葛藤と戦って、疲れきった状態で心の病気になるのです。あせらず地道に治す努力をすることが、回復への近道だと思います。
心の病気によく使われる漢方薬
 心の病気に対しても、体質と症状に合わせて効果をあげることができるように、昔から数多くの漢方処方が工夫されてきました。それらの中で一般的に比較的よく使われる薬を紹介してみます。
 詳しいことは寿元堂薬局または、漢方の専門家によく相談してください。
うんたんとう
温胆湯
 精神が弱って、少しのことにも驚きやすくなっている状態に使われます。不眠症や、眠れても嫌な夢を見たりして十分に睡眠がとれないことが続く人にもよいことがあります。
かんばくたいそうとう
甘麦大棗湯
 神経症や不眠症などに使われますが、大きな理由もないのにしばしば悲しんだり、悲しんで泣くことが多い状態や、あくびをよくすることを目標とします。
きひとう
帰脾湯
 心配事や考え事が過ぎて心を病み、物忘れすることが多くなったり、胸騒ぎをしたり、眠れなかったり、食欲がなくなっているような状態に使われます。
さいこかりゅうこつぼれいとう
柴胡加竜骨牡蛎湯
 体力のある人で便秘傾向があり、胸苦しさを感じたり、胸や腹のあたりで動悸を打ち、驚きやすく、眠れないような人に使われます。
 この薬を使う目標があっても、体が虚弱な人には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が適する場合があります。
しょうようさん
逍遥散
 貧血傾向があり、疲れやすい人の神経症状に使われます。
 頭痛、頭が重い、めまい、たちくらみ、イライラ、手足がほてるなどの不定愁訴を訴える女性に使われることが多く、月経不順を伴うこともあります。やせ気味の女性に適することが多い薬です。
 更年期障害の女性で、のぼせたり、赤面する人には、逍遥散に牡丹皮と山梔子を加えた加味逍遥散(かみしょうようさん)がよいケースが多いようです。
はんげこうぼくとう
半夏厚朴湯
 のどに炙った肉が張り付いているような感じがある症状に効くとされています。
 この症状は梅核気(ばいかくき=梅の種がのどにつかえている感じ)ともいわれますが、西洋医学のヒステリー球という症状に似ています。女性の気うつに使われることが多い薬です。
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