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冷え症と漢方
 「冷え症」という言葉は昔からよく使われており、日常会話の中でも違和感はありません。
 それほど一般化している冷え症ですが、通常は、秋から春にかけて少し気になる程度の症状の人が大部分でした。しかし、最近の日本では冷え症の人が急増し、しかも症状が強くなるばかりです。
 つい2~30年前までは、夏に冷える人は珍しかったものですが、今では「夏の冷え症」が蔓延してしまいました。
 冷え症は、様々な体調不良や病気に大きく影響するので、漢方では昔から上手に改善してきました。
 冷蔵庫やクーラーの普及など、冷え症をつくりやすい生活をしている現代人は、上手に漢方を利用すればよいでしょう。
冷え症とは
 冷え症には、甲状腺機能低下症やレイノー病などの病気によっておこる病的なものもありますが、通常冷え症といえば、体質的な冷え症のことをいいます。
 健康に大きく影響する冷え症ですが、西洋医学では単に体質として、冷える性分のことを「冷え性」とよび、とりたてて問題にされることはありませんでした。
 それ故かどうか、「冷え症」には、明確な定義があるわけではありません。「通常は冷えを感じない気温の中で、身体の一部分が冷たく感じる場合」という程度の曖昧なものです。
 冷えを感じる症状は人によって異なります。
 全身が冷える、体の一部が冷える、二カ所以上五~六カ所が冷えるなど、冷えを感じる身体の部位はさまざまです。また、多くの場所や広い部分が同じように冷えたり、特定の部位だけが特に冷たく感じることもあります。
 最近では、冷えを自覚していない冷え症の人も多く、漢方相談の中ではじめて冷え症に気づくことが少なくありません。
 漢方の古典に出てくる症状もさまざまです。足腰が冷えちゃう
 手足のみ、腰のみ、腰脚のみ、足首のみ、膝から下、足先、下腹部などが冷えることが多く、水の中に座っているようだとか、腰から下腹部にかけて風が吹きぬける感じ、氷をあてているように冷たいなどと、昔から細かく観察され、治療に役立ててきたのです。
冷え症と病気
腰が冷えるぅ 冷え症そのものは病気として扱われていません。しかし現実には、冷え症という不快な症状だけで悩んでいる人も少なくありません。
 そして、病気や体調不良で悩む人達には、男女ともに身体全体あるいは一部に冷えを感じている人が多いものです。
 時には強く冷えたことがきっかけで病気を誘発したようにしか思えないケースもあるように、冷え症は多くの病気の発症にも影響していると考えられます。
 急性の膀胱炎や下痢などはもちろんのこと、慢性の病気にも冷えが影響しやすいものです。特に、腰痛、神経痛、関節症、リウマチなど痛みの病気、月経不順、更年期障害など女性の不調、気管支ぜん息や自律神経失調症などで冷えの影響が目立ちます。
 そして、最近では、冷え症の若年化と不妊症の女性の増加と冷えの関係も気になります。
 健康に大きな影響を与える冷え症を軽んじることのないよう、十分に注意しましょう。
冷え症の原因は?
 冷え症はなぜおこるのでしょうか。
 結果的には血液の流れが悪くなることが直接の原因ですが、西洋医学では大きく次の四つのタイプにわけられます。
①自律神経の失調
 自律神経はストレスの影響を受けやすく、自律神経が緊張すると血管が収縮し、血行が悪くなって冷え症になります。不安、イライラ、無気力、動悸、息苦しさ、頭痛、肩こりなどの症状を伴うケースが多くあります。
②低血圧
 低血圧は、血液を体のすみずみまで行き渡らせる力が弱く、手足の血行不良をおこします。立ちくらみ、めまいなどの症状を伴うことがあります。
③貧血
 貧血は血液中のヘモグロビンの量が不足した状態です。最近の食生活をみると、偏食によって栄養素が不足することが大きく影響していると思われます。手足ばかりでなく、全身が冷えることも多く、疲れやすくなります。
④ホルモンのアンバランス
 エストロゲンなど女性ホルモンの分泌の変調によっても冷え症になります。月経不順、月経痛、不妊などの症状や卵巣や子宮の病気がある女性の多くに冷え症があり、漢方で症状が改善されていくとともに冷え症も改善していくのがわかります。
 また、更年期の女性には、冷えのぼせを訴える人があります。
漢方では
 漢方では、気・血・水(き・けつ・すい)の失調が冷え症をおこすと考えます。
 自律神経の働きのように機能的なものを漢方では気の働きととらえ、ストレスなどによる自律神経の働きの乱れは気の変調になります。
 低血圧や貧血の人によくみられる水分代謝の異常は水毒と考えます。
 漢方相談の中で、女性の冷え症の多くはホルモン分泌のアンバランスによるものだと感じます。この状態を、漢方では瘀血(おけつ/瘀血のオは、やまいだれに於)があるといいます。
 気・血・水は複雑に影響しあって多様な病態をつくります。漢方では様々な状態に対応できるように、昔から多くの漢方薬が工夫されてきたのです。
漢方薬と生薬
 冷え症を治す漢方薬は数多くあり、代表的なものの一つに、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)があります。当帰、芍薬、川芎(せんきゅう)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)という生薬の組み合わせです。
 この中の当帰には、瘀血(おけつ)を去る作用があり、体をよく温め、補います。今風に表現すると、ホルモン分泌のバランスを整えて血行をよくし、冷え症や貧血、低血圧の改善に役立ちます。また鎮静作用や、自律神経の失調を整える効果もあります。
当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん)
 「その昔、冷え症で貧血気味の花嫁がいて、子供もできず、夫に嫌われておりました。実家に帰り、母親に教わり薬草を煎じて飲んで冷え症が治り、当(まさ)に喜んで夫のもとに帰った」といいます。それで当帰という名前がついたということです。それほど、当帰は冷え症の女性によく効くのです。
 そして、当帰芍薬散を適切に使ったときの効果は、当帰だけの効果よりもはるかに優れています。このように、漢方薬は生薬の特徴を上手に組み合わせて、優れた効果を積み重ねてきたのです。症状と体質に合わせて適切に利用すれば、冷え症の改善に役立ちます。
当帰(とうき)
冷えと漢方
 右は江戸時代(元禄元年・1688年)に出版された「方彙口訣(ほういくけつ)」という漢方医学書の中暑(ちゅうしょ)門の一部です。
 中暑は「暑さに中(あた)る」という意味ですので、中暑門には夏の暑さによっておこるいろいろな病気の治療法が書かれています。
 そして、赤線の部分にあるように、炎暑の夏でも涼み過ぎたり、冷たいものを食べたりして、冷えておこる病気が多いという指摘があり、その治療法も後述されています。
 他にも、漢方の古典には夏の冷えに関する記述が多くあり、「四季の中で夏こそ最も冷える季節」という記載もあります。
 冷蔵庫やクーラーはもちろんのこと、氷やアイスクリーム、清涼飲料水など、体を強く冷やすものがなかった時代でさえ、人間の体を冷やすことの害がわかっていたのです。
 暑い夏季の冷えにも対応してきた漢方には、冷え症の改善に長い歴史と実績があり、現在でも、冷え症や冷えを伴う病気を改善する最善の手段の一つです。
日常の注意
 いつの間にか私達の生活様式が変わってしまい、最近では、クーラーや冷蔵庫の普及、薄着の一般化、果物・生野菜を多食するなど、冷え症を作りやすい生活環境になっています。
 冷え症を予防・改善するには、冷たいものや生ものを飲食することは夏でもできるだけ避けましょう。
 アイスクリームや氷菓子、ジュースや清涼飲料水、生野菜のサラダや果物、お菓子などの過食を避け、魚や肉など動物性蛋白質を適度に摂りましょう。
 そして、昔ながらの煮炊きした家庭料理を主として、栄養バランスに配慮した食生活に努めることが大切です。
 また、クーラーで冷やしすぎないように注意し、夏でも過度な薄着はしないように気をつけましょう。
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